西蔵 (チベット)schedule
1回目:2006年10月 (2回目はこちら)
会社の同僚のY君とチベットに4泊5日で旅行した。今回は私が往復とも空路、Y君は今年開通した青蔵鉄道にどうしても乗りたいというので行きは列車(所要:48時間)で帰りは飛行機となった。ただ、青蔵鉄道の切符は入手が非常に困難で友人のコネで何とかゲット。更に、二人の日程の関係で1日ずれた変則ツアー(彼が先に入り先に帰る形)となり、結局、現地では2日間一緒に観光した。
第1日目の朝、北京空港から成都経由で拉薩に向かう。経由地の成都を飛び立ったとたん聞き慣れない言葉で機内アナウンスが流れる。多分チベット語なのだろう。最初にチベット語、次に普通語、時には英語も混じり、何か違う国に来た感じだ。事実、我々外国人がチベットに入る際は事前に旅行社経由で許可証を取得する必要があり、日本から中国に入るのより面倒だ。
四川風の辛い機内食を食べていると突然雪山の景色が見えてきて思わずシャッターを切る。
予定より約1時間遅れの午後3時半に拉薩到着。天気は晴れ。迎えの車に乗り、途中の拉薩川の綺麗な景色を右手に見て拉薩市内へ入り、「ポタラ宮」の前を通り1時間強でホテルに到着。部屋は(たまたま)スイートに当たり応接間・ジャグジー風呂付き。一瞬ラッキーと喜んだが、その立派な風呂が不調(湯の出が悪く温度も低め)で最後まで苦労した。高度順応のため暫くホテルで休息した後、先に来ていたY君と一緒に夕食。標高3650mの高地のせいか少し気分が悪くなってきた。Y君は初日から張り切って歩き過ぎたらしく、高山病の症状でぐったりで食が進まない(逆に私は食べ過ぎして後悔)。食後、二人で街を散歩。ホテルの近くには「ジョガン(中国名:大昭寺)」もあり賑やかで、寺の前では、夜にも関わらず、両手・両足・額を地面につける「五体投地」で祈りをしている人がいる。
夜は早めに寝たが高山病が酷くなり(頭痛と呼吸困難)、3時過ぎにやっと浅い眠りに就いた。
第2日。まだ症状が続いて食欲が無かったが、無理に食べたら少し元気になった。今日は終日拉薩市内観光。午前は歩いて「ジョガン」へ。チベット仏教総本山だけあって朝から大勢の巡礼者が訪れており、寺院の前では「五体投地」、本殿の中では列をなしてお堂巡りをしている。灯明に使うバター(ヤクの乳製らしい)の燃える匂いが辺り一面に立ち込めている。唐の時代に「文成公主」が西蔵に嫁いでくる際に唐の都から持ってきたといわれる「釈迦牟尼像」を見た後、本殿内の巡礼路をチベット式に時計回りに一周、最後に屋上に登り、金瓦の屋根とその間から「ポタラ宮」の遠景を見た。その後、「ジョガン」の外の巡礼路「バイコル(八角街)」を一周、散策。ここは市場や土産物屋が立ち並ぶバザールで庶民のエネルギー溢れている感じ。ただ中国の各観光地で見られる強引な呼び込みは少ない。
昼食まで時間が空いたのでホテル脇のコーヒーショップで一休み。欧米人が多く拉薩版スタバという感じでの店でコーヒーも美味しい。WLAN・パソコンも揃っている。
昼食はチキンカレーセットを注文。味はまずまず。後で聞いた話だが、チベット人は鶏の様な小動物は食べないとのこと、また魚も(水葬の習慣の関係からか)あまり食べないとのこと。
13時から「ポタラ宮(中国名:布達拉宮)」見学。天空にそびえるが如く大きく(高さ117m・東西360m)、一千もの部屋があるそうだ。以前に承徳で見た所謂「ミニポタラ宮」とは全くスケールが違う。ここの見学は事前予約制で許可証とパスポートが必須、しかも見学時間は1時間以内の制限付。「之」字形のジグザク階段を、呼吸を整え一歩ずつゆっくり昇って行く。かなりきつい。因みにダライ・ラマは裏から馬に乗って入口まで行くそうだ。ダライ・ラマの居室があり政治を行う「白宮」側から入り、歴代ダライ・ラマの廟があり宗教儀式を行う「紅宮」へとまわる。殆ど止まらずに見て丁度1時間。2時半過ぎに正面に戻った。
今日はこれでお終いとガイドが言う。時間が勿体ないのでちょっと遠い(片道65km)が「ガンデン寺(中国名:甘丹寺)」に行くことにした。旅行社の運転手と交渉したら1人で700元、2人で1100元と吹っかけるのでタクシーを選択。交渉の結果300元。ラサ(キチュ)川沿いに東(川上方面)へ向かう。タクシーはかなりのボロでよく見るとスピードメーターが壊れて動かない。途中でリタイヤしないことを祈る。1時間程の所で「甘丹寺」への標識を発見するも、その先に通行止め表示あり。諦めずに何とか迂回路を見つけて先に進むと、そこから先は細い砂利道。埃を舞あげながら延々と山登りするも終点が見えてこない。途中、道路工事で10分近く待たされた後、更に30分近く登ってやっと目的の「ガンデン寺」の前に到着。山の斜面に階段状にいくつもの建物が建っており山城のようだ。海抜は4300m、拉薩から600m以上登ってきたことになる。ヤクが近くにきたので一緒に記念写真、満足して戻る。それにしても、こんな悪い道を苦にもせず行ってくれたタクシーの運転手には感謝・感謝、100元プラスして400元を渡した。因みに、運転手は、黒竜江省)牡丹江出身の漢族で、娘さん(20歳)が大阪の大学に留学中とのこと。夕食はチベット民族舞踊観賞付き。欧米人ばかりで日本人はゼロ。夜は高山病で寝つけず。4時頃から少し眠れたが、浅い眠りの中で久し振りに子供の頃に見た様な怖い夢を見続けた。
第3日。頭痛は残っているが酷くはなく昨夜の睡眠不足もあまり感じない。今日は拉薩郊外の「カンパラ峠(4749m)」を越えて、神秘の湖「ヤムドウ湖」までの片道200kmの旅。天気は曇りで所々青空が覗いている。朝9時出発。車は時速90kmの猛スピードで「ラサ(キチュ)川」沿いの村々を通り抜け南西(川下方面)へ向かう。拉薩の車はオフロード車が多く、中でもトヨタの「ランドクルーザ」がやたら目に付く。中国ではホンダ・日産の方が有名だが拉薩は別だ。因みに、新車で70万元(1000万円強)するそうだ。今回乗っているJINBEIという中国でポピュラーな車は10万元(150万円)で買えるとのこと。
約1時間行った所で「ラサ川」が「ヤルツォンボ川」に合流、今度は「ヤルツォンボ川」に沿って(上流方面に)進み「ヤルツォンボ川」を渡った辺りから幹線をそれて峠に向かう。道は険しく、高さが何百mもある断崖の中腹を進み、やがてつづら折りの道へと変わり、どんどん高度を上げていく。斜面には「ヤク」の群れが見える。道脇には雪も残っている。「ヤルツォンボ川」は遥か下に見える。
11時丁度に標高4749mの「カンパラ峠」に到着。突然「ヤムドウ湖」の鮮やかな濃紺の湖水が姿を現した。感激。峠のちょっと下った所の休憩所で暫く休憩&撮影タイム。現地の方の出してくれたミルクティーを御馳走になっていると、見たことのある若い日本人カップルが入ってきた。同じ旅行社のツアーに参加していてホテルも一緒。日本からカトマンズ経由でヒマラヤ山脈を眼下に見てチベット入りしたとのこと。意外にも、拉薩-カトマンズ間は800kmで北京-上海間よりずっと近く、陸路でも2日で着くそうだ。途中、エベレストから70kmの地点を通るそうだ。標高も5200mが最高で問題無いとのこと。チャンスがあったら行きたいが高山病は懲り懲りだし悩むところだ。彼ら2人は高山病の気配は全く無くピンピンしている。測定器で測ってみると、彼らは共に90代で全く問題無し、Y君は60で高山病状態、私も最初60で深呼吸を繰返す毎に3-4ずつ上がり最終的には90代になった。高山病は個人差が大きいが、対策としては、深呼吸(繰返)・水分摂取・睡眠・ゆったり動作が重要で、風呂・酒は避けた方が良いとのこと。
12時過ぎに「ヤムドウ湖」の湖畔(標高:4500m)に到着。ここで昼食(弁当)タイム。湖の水に触れると、冷たくて気持ちいい。食後、暫く寝そべってゆっくりする。気温は低いが日差しは物凄く強い。
約1時間ぶらぶらして13時に帰路に。「カンパラ峠」を再度越え元きた道を引き返す。途中、サイクリングで峠越えをしている欧米人ペアに遭遇。何とも凄い。拉薩まであと40分という所で、ラサ川の畔に車を停めて休憩タイム。ラサ川は河原がとても広い。幾筋もの蒼い流れが河原をぬってゆったりと走っており、所々道の反対側まで延びてきている。ポプラの木々が河原や水の中まで生えており、九寨溝とはいかないがポプラの黄・緑と川の色が調和して素晴らしい。水量が増える8月頃には河原は水で隠れてしまうとのこと。対岸は草木一本も無い裸の山々。拉薩付近の山という山は全てこんな裸山だ。
15時半頃ホテルに戻る。時間が余ったが疲れたので外出せず部屋で休息。夕食はチベット式火鍋だが二人とも食欲無し。Y君は殆ど箸が進まなかったが、私は何とか全種類箸を付けた(中国でずっとやり続けている私のモットー)。こちらで初めてビールを1杯だけ飲んだ。また、自家製ヨーグルトが美味しかった。夕食後、二人でホテルの脇のコーヒーショップへ。ここのカフェラテを飲んで柔らかい椅子に深く腰掛けてゆっくりしていると高山病の症状も和らぐ。至福の時だ。今晩は寝る前に10分位深呼吸を続けたためか比較的眠れた。ただ眠りは浅く、またしても怖い夢を見続けていたような感じがする。
第4日。今日はY君が帰る日なので一人で拉薩市内観光。10時出発。先ず、ダライラマの夏の離宮である「ノルブリンカ(中国名:羅布林卡)」へ。ダライ・ラマ14世(インド亡命中)の純金製の椅子は世界一だそうだが、見る所は少なく30分で終わってしまった。
昨日から「デプン寺(中国名:哲蚌寺)」へ行きたいとガイドと交渉していたが、許可証の中に入っていないので駄目と言っていた。今日改めて根掘り葉掘り聞いてみると、「ポタラ宮」以外は許可証不要、ただ旅行社として予定外の所は行けないとのこと。一昨日の「ガンデン寺」の時は金を吹っかけておきながら近場で金が取れない時には行けないと言う。呆れたが怒る気にもなれず、自分で(タクシーで)行くことにした。昨日Y君も行きたいと言っていたのでホテルに戻って探したが外出中(今日は午前中は自由行動)。やむを得ず一人で出かける。「デプン寺」は、ラサの北西8kmの岩山の斜面にあり、年に1回の「ショトン祭」で寺院の西側斜面に掛ける巨大な布(「タンカ」と言う)が有名だそうだ。寺院の規模はかなり大きく階段が多い。一通りまわるだけで1時間以上かかり疲れた。帰りはタクシーが拾えなかったので、10元でトラックに乗せて貰って途中まで行き、タクシーに乗り換えホテルに戻った。
午後は、「セラ寺(中国名:色拉寺)」へ。約100年前に日本人の「河口恵海」が学んだことがある寺院で、「問答」が有名。僧侶達は年1回の問答の試験を通じて階級が上がる。この問答の練習は一般に毎朝行われるが、「セラ寺」は観光客向けに毎日午後3時から1時間半程度公開している。質問者と回答者がペアで独特のポーズで行う問答は興味深い。夜は一人で食事後、コーヒーショップでゆっくりする。夜はちゃんと(7時間も)眠れ、悪夢も無かった。
第5日。高山病の症状は完全に消えた。今日は自由行動。10時から12時まで街を散歩。買物をしながら「ポタラ宮」の前の広場まで歩き、真っ青の空にそびえる「ポタラ宮」をしばらく眺めていた。
昼食後、ホテルを出発し空港へ。2005年から、トンネルを抜ける新しいルートができ空港が近くなった(2時間(100km)から1時間強(60km)に短縮)。拉薩から「カンパラ峠」へ向かう途中の所で幹線を外れ、「ラサ川」を渡りトンネルを抜け、今度は「ヤルツォンボ川」にかかる長い橋を渡る。河辺の感じは「ラサ川」と同じだが、「ラサ川」と合流しているだけありかなり広い。空港はこの「ヤルツォンボ川」沿いにある。
空港に着いた途端、飛行機の到着が1時間以上遅れるとのアナウンス。空港ラウンジで旅行記を書いたりして時間を潰し17時少し前に離陸、経由地の成都で更に遅れ、北京には22:15到着。久し振りの長旅で疲れた。
今回の旅で感じたこと。①これまで「ラサ」・「チベット」と言うと「高地」とか「山」を思い浮かべていたが、今回実際に行ってみて「水」の美しさに感動した。「ラサ川」、「ヤルツォンボ川」、「ヤムドウ湖」の水の美しさ、空・雲・太陽・風の具合に応じて水の色が濃紺・青・エメラルドグリーン・白と刻々と変化する様子は言葉に尽くせない。②やはりチベットは宗教の国。生活の中に宗教が完全に入り込んでその一部になっているのを実感した。
<スケジュール> 宿泊は全て「香巴拉酒店」※印は個人行動
第1日 北京->拉薩CA4112(9:30-14:40) 1H遅れ着。車でホテルへ(1H)。休憩後八角街散策
第2日 ジョガン(大昭寺)・バイコル(八角街)・ポタラ宮(布達拉宮)・ガンデン寺(甘丹寺)※観光
第3日 カンバラ峠(4749m)からヤムドウ湖を眺める。ヤムドウ湖畔で昼食(弁当)。
第4日 ノルブリンカ(羅布林卡)・デプン寺(哲蚌寺)※・セラ寺(色拉寺)観光
第5日AM自由行動、拉薩->北京 CA4111(15:40-20:30) 1:20遅れで離陸、1:40遅れで北京着。